胡蝶蘭が寒さに弱い理由

胡蝶蘭が冬に弱いのは、もともと熱帯アジアの温暖で湿潤な地域で育ってきた植物だからです。原産地では、1年中気温が高く安定しており、胡蝶蘭は木の幹などに根を張り、空気中の水分や栄養分を取り込みながら育ちます。
私たちが快適に感じる20℃〜25℃が、胡蝶蘭にとっても理想的な温度です。気温が15℃を下回ると、胡蝶蘭は成長をストップして「休眠期」に入り、体力を温存しようとします。この状態が長く続くと、株は徐々に弱ってしまいます。さらに、10℃以下になると株は低温ストレスを感じ始め、5℃を下回ると、細胞が壊れてしまう「凍害」が急速に進んでしまうため注意が必要です。
| 温度の目安 | 胡蝶蘭の状態とリスク |
|---|---|
| 20〜25℃ | 健全に成長し、花を咲かせる理想的な温度 |
| 15℃以下 | 成長を停止し、休眠期に入る |
| 10℃以下 | 低温ストレスを受け始める |
| 5℃以下 | 細胞が壊れる「凍害」が進行 |
また、冬の胡蝶蘭は「低温」と「水分のあげすぎ」が組み合わさると、さらに危険です。気温が下がって休眠期に入ると、根が水を吸う力が弱くなります。その上、冬は植え込み材(水苔など)がなかなか乾きません。植え込み材が常に冷たい水に濡れた状態だと、根が冷えて機能を停止し、最終的には根腐れを起こしてしまうのです。
胡蝶蘭が寒さで弱ったときのSOSサイン
胡蝶蘭が寒さで傷むと、いくつかのサインを出します。症状は急性の「凍害」と、ゆっくりと進む「慢性的な低温障害」に分けられます。見分けるのが難しいこともありますが、いち早く気づくことが大切です。
SOSサイン①:凍害かも?こんな症状は要注意!
気温が5℃以下になった時に現れる症状で、細胞が急に破壊されることで起こります。
・花が急にしおれる:水分を含んだまま、だらんと垂れ下がるのが特徴です。普通の枯れ方と違い、黄色く変色しないのがポイント。
・葉の色が濃くなる:葉のつやがなくなり、色が濃い深緑色に変わります。茶色や黒のまだら模様が出たり、葉がふやけたように水っぽく見えることもあります。
SOSサイン②:低温障害や根腐れかも?
長期間10℃〜15℃の場所に置かれたり、低温による根腐れが進んだ時に見られる症状です。
・葉が黄色く変色してしおれる:低温ストレスのサインです。根腐れや乾燥でも同じような症状が出ることがあるので、植え込み材の状態もチェックしてみましょう。
・根が黒く変色して崩れる:根腐れが起きているサインです。外から見えにくい根腐れは、葉がしわしわになったり、花が枯れたりして初めて気づくことが多いです。
症状と環境を合わせて考えることが重要です。花の変色がないしおれや、葉の深緑色のまだら模様は凍害の決定的なサインなので、早めに対処してください。
失敗しない!胡蝶蘭のお手入れポイント3つ
胡蝶蘭の冬越しを成功させるには、「温度」「光」「水」の3つを上手にコントロールすることが大切です。
ポイント① 置き場所を見直そう
胡蝶蘭にとって一番のストレスは、昼と夜の急激な温度変化です。
・夜は窓際から離す:日中は明るい窓際でも、日が落ちると外の冷気に冷やされ、5℃以下になってしまうことがあります。夜になったらリビングの中央など、部屋の内側の暖かい場所に移動させましょう。
・日中はレースのカーテン越しに:胡蝶蘭は直射日光が苦手です。葉焼け(葉が黒くなる)の原因になるので、冬でも必ずレースのカーテン越しに日光を当ててあげてください。光合成を促すことで、株の体力を保てます。
・風を避ける:エアコンやストーブの温風が直接当たると、急激な乾燥や温度変化で株が弱ってしまいます。暖房器具の近くは避け、風通しの良い場所を選んでください。
ポイント② 適切な室温を保とう
胡蝶蘭を守るには、安定した温度を保つことが大切です。最低でも10℃以上、可能であれば15℃〜20℃をキープするのが理想です。
・夜間も暖かくする:仕事で家を空けたり、夜間は暖房を切ってしまうと、部屋の温度が急激に下がってしまいます。できるだけ暖房をつけっぱなしにするか、後述の保温グッズを使って温度を安定させましょう。
・湿度も意識する:暖房を使う冬は空気が乾燥しがちです。胡蝶蘭にとって理想的な湿度は50%〜70%。加湿器を使ったり、湿度が低い場合は葉にこまめに霧吹きをして水分を補給してあげましょう。ただし、夜間に葉に水滴が残ると冷えてしまうので、葉水は必ず日中の温かい時間帯に行ってください。
ポイント③ 冬の水やりは「控えめ」が基本
冬は胡蝶蘭が休眠期に入るため、水やりを大幅に減らすのが鉄則です。
・月1〜2回程度に:植え込み材(水苔など)が完全に乾いたことを確認してから水をあげてください。過剰な水分は根腐れの原因になります。
・水温はぬるま湯で:冷たい水を与えると、根にショックを与えて株を弱らせてしまいます。水やりには常温か、少しぬるめのお湯を使いましょう。
・午前中の温かい時間に:夜に鉢の中に水分が残ると根が冷えてしまうため、水やりは必ず午前中、特に10時頃に行い、夕方までには余分な水分が蒸発するように管理してください。
身近なものでOK!お役立ちグッズ
暖房を使えない時間帯でも、身の回りのもので胡蝶蘭を寒さから守ることができます。
・新聞紙や段ボール:中に空気の層がたくさんあるので、断熱材として優秀です。鉢全体を段ボールで囲って簡易的な温室にしたり、鉢カバーと植木鉢の隙間に丸めた新聞紙を詰めたりするだけでも効果があります。
・プチプチ(気泡緩衝材):プチプチの気泡が空気層となり、冷気をシャットアウトしてくれます。鉢カバーの内側に貼ったり、窓ガラスに貼って冷気の侵入を防ぐのに活用できます。
・発泡スチロールの箱:最も確実な防寒対策です。胡蝶蘭が入るサイズの発泡スチロール箱を用意し、夜間はそこに入れておくと、温かい状態を保てます。
寒さで胡蝶蘭が弱ってしまったら?

もし胡蝶蘭が寒さでダメージを受けてしまっても、諦める必要はありません。大切なのは「焦らないこと」と「正しい対処法」です。
葉がしおれたり変色した場合
まずは胡蝶蘭を15℃以上の暖かい場所に移動させましょう。そして、植え込み材が湿っているようなら、根腐れの可能性が高いので、水やりを極限まで控えてください。
冬の植え替えは控えましょう。根腐れを疑うとすぐに植え替えたくなりますが、これはとても危険です。冬は株が弱っているので、環境の変化に耐えられず枯れてしまうリスクが高まります。植え替えは、気温が安定する春(3月〜5月頃)まで待ちましょう。
凍傷のサインを見つけた場合
葉が深緑色に変色したり、花がしおれているのを見つけたら、すぐに15℃以上の安定した場所へ避難させます。
傷んだ部分は取り除くことが大切です。凍傷で壊死した部分は元に戻りません。そのままにしておくとカビや細菌が入り、腐ってしまう原因になります。清潔なハサミで傷んだ部分を切り取り、そこから病気が入らないように注意しながら管理を続けてください。
凍傷からの回復には時間がかかります。焦らず、安定した環境で株の体力を温存させ、春の成長期を待ちましょう。
まとめ
胡蝶蘭の冬越しは、少しの工夫でグッと成功率が上がります。重要なのは、「最低でも15℃をキープする」ことと、「水やりは控えめに、ぬるま湯を午前中にあげる」ことです。夜間の窓際からの冷気を避けるために、新聞紙や段ボール、発泡スチロールなど身近なものを使った保温対策も効果的です。
冬の寒さ対策をしっかりと行い、胡蝶蘭が元気に冬を乗り越えられるように、今回紹介した内容を参考にしてみてください。
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